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(2011-12年 婦人靴の秋冬トレンドとは/シューフィルZAT’S No.34より転載)
「正統、普通であることが、新しい。」
オーソドックスであることが新しい。イタリアの靴メーカーが、こんなことを言っていた。2011年秋冬は、まさしくそんなシーズンだ。数シーズン前からアメリカンへの傾向が見られ始め、昨年は確実にトラディショナルがトレンドとなった。要するにその傾向が、より顕著になったということだ。欧米の方がオーソドックス帰りの傾向が強く出ているように思われるが、日本でも基調は変わらない。震災の影響によって、サバイバル的なテイスト、つまりワーク調などカジュアル・テイストでの表現が強くなって現れることの予想される。
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Authenic&Classic ~トラディショナルからニュートラへ~
昨年秋冬の代表アイテムを一つ挙げるなら、オックスフォード。メダリオンを施した紐締めのヒール物シューズ、つまりトラッドなのだが、2011秋冬は、ローファーやタッセルに移行、さらにビットやバックル型の金具付きのパンプスも登場。トラッドというよりニュートラ調エレガンスへの流れを見せている。正統派ファッションへの流れを象徴するテーマだ。

Survival&Work ~サバイバルとしてのワークテイスト~
アメリカンへの傾向からアウトドアやワークテイストへの注目が集まっているが、この流れも継続している。東日本大震災、それによる帰宅難民、その体験、教訓から震災後、機能型の商品が売れているが、アウトドアやワークは、山ガールなどのファッションに留まらず、サバイバル・アイテムとして、秋冬ファッションの軸になりそうだ。

80’s Modern ~1980年代的モダンテイスト~
1980年代に注目された構築性、造形性を特徴としたモダンでミニマムな流れ。日本ではそれほどの注目を見なかったが、欧米では根強い。2011秋冬も、ストーム使いのプレーン・パンプス、またショートブーツやトップラインの深いパンプス、あるいはブーティとして継続している。特に後者は、パンツとの組み合わせで再注目ということになりそうだ。
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Survival 2-Fur ~ファッションとしてのサバイバル~
昨年はムートンを筆頭に毛皮使いのブーツがヒットしたが、毛皮=ファーは、2011秋冬もトレンド素材として継続している。最も一般的なのは、ムートン。カジュアル・ブーツへの使用が多いが、その他、ポニー、ラビットなど各種登場している。注目の背景は、サバイバル。大震災によらず、世界は特に経済的に厳しい環境。その中で生き残りのファッション表現だ。
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Mannish&Sport ~マニッシュシューズとスポーツ~
外羽根や内羽根のプレーントゥやウィングチップ、男性靴のスタイルが女性靴のトレンドとして、ファッション最前線に浮上している。1980年代以来か。久々の現象だ。マニッシュとは、ヒールが低く、幅もあるため、それだけで機能的。トレンドに終わらせず、女性靴の定番として定着させたいものだ。また、下駄箱ワードローブに必須なのがスニーカー。加硫タイプが、ファッションとしての威力を持っている。
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New Ballerina ~ソフトからハードへ転移する~
バレリーナ人気はいつまで続くのか。トレンド・アイテムというより、コレクションになくてはならないスタイルとして定着した感がある。そんな中で変化が見られる。柔らかいバレリーナ本来の作りからハードへの転換だ。例えばアッパー素材ではエナメル、ヒールはよりしっかりと。かつてのニュートラのカッターシューズのような雰囲気が新しい。
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New Material ~アッパー素材の新傾向~
素材の傾向に触れると、2011秋冬の大きな特徴は、エナメルの復活だ。そしてさらに新しいのが、ガラスの台頭。背景にあるのは、クラシックへの注目だ。それと気になるのが、エラスティック、つまり伸縮素材。1980~90年代に伸縮素材のパンプスやブーツがヒットしたことがあったが、エラスティック素材の使用をコンセプトとしたブランドも登場しており、ヒット再来の予感も。
写真/文:シューフィル