靴の木型(靴型/シューラスト)について。
メンズの「ドレスシューズ」と呼ばれる紳士用ビジネスシューズ(革靴)を例に、木型と足と靴の関係について説明します。
▼ 木型
▼ 足を計測する
・足のデータ
▼ 靴を計測する(タイプA)
・靴を履いてみる
▼ 靴を計測する(タイプB)
・靴を履いてみる
▼ まとめ
▼ 関連ページ
(文・写真/靴のパラダイス 大嶋信之)
木型
木型とは、靴型と呼ばれる、靴を製造する時の足型です。
昔は木製だったため「木型(きがた)」と言いますが、現在はプラスチック製が主流のため、「プラ型(ぷらがた)」とも呼ばれます。
写真は、店長(足のモデル)がぴったりのサイズの2種類の木型です。
ともに木型(靴)のサイズは、「紳士用 27.0cm」になります。
写真右のラウンドトゥをタイプA、写真左のスクエアトゥをタイプBとします。
タイプBの方が、タイプAに比べ、つま先がやや長めになっています。
木型と足の大きさの比較です。
それぞれの木型で作ったドレスシューズを列べて比較してみます。
写真左がタイプA(ラウンドトゥ)で、写真右がタイプB(スクエアトゥ)。
足を計測する
最初に、足のサイズを計測してみます。
「足長(そくちょう)」と呼ばれる、踵からつま先までの全長を計測します。
店長の足は、親指(母趾)より人差し指(第二趾)の方が長い「ギリシャ型」(ご参考:足のタイプについて)なので、踵から人差し指(第二趾)までと、親指(母趾)までの2点を計測します。
踵~人差し指(第二趾)までは、275mm でした。
踵~親指(母趾)までは、270mm でした。
次に、足の幅も測ってみます。
計測箇所は「ボールジョイント」と呼ばれる、親指(母趾)の付け根と、小指(第五趾)の付け根の距離を測ります。
足幅は、110mm でした。
最後に、「足囲(そくい)」と呼ばれる、甲回りを計測します。
先程のボールジョイントと甲を結んだ周囲(「ボールガウス/ボールガース」とも言う)を測ります。
足囲は、275mm でした。
少し力を入れて絞ると、270mm でした。この絞った値を「ころし寸(ころしずん)」と言います。
足のデータ
以上、店長の足のサイズを、国内革靴のサイズ基準である「JIS規格(日本産業規格)」に当てはめると、
人差し指(第二趾)を基準にした場合:
サイズ27.5cm/ワイズ3E(EEE)
親指(母趾)を基準にした場合:
サイズ27.0cm/ワイズ4E(EEEE)
となります。
木型を計測する(タイプA/ラウンドトゥ)
次に、木型を計測します。
木型(靴)のサイズは、「紳士用 27.0cm」です。
踵からつま先までの全長を計測します。
全長は、298mm でした。
次に、幅も計測します。
一番張り出たボールジョイント部を計測します。
最大幅は、103mm でした。
最後に、甲回り(足囲/ボールガウス)を計測します。
足囲は、255mm でした。
この木型で作られた靴を列べて、木型との大きさを比較してみます。
靴を計測する(タイプA/ラウンドトゥ)
靴の全長(アッパーの全長とソールの全長)を計測してみます。
アッパー全長は、299mm 、
ソール全長は、303mm でした。
次に、靴の幅(アッパーの幅とソールの最大幅)を計測します。
アッパー幅は、103mm 、
ソール最大幅は、115mm でした。
靴を履いてみる
実際に、靴を履いた様子。
羽根の開き具合(甲のフィット具合)もちょうど良く、踵(かかと)もフィットし余裕がないうえ、つま先は適度なゆとりがあり、指も当たらずジャストサイズと言えます。
幅(ボールジョイント)には適度な圧迫があり、幅、甲、踵の3点がフィットし、つま先には適度なゆとりがある「ジャストフィット」と言ってよいです。(ご参考:ジャストフィットとは)
木型を計測する(タイプB/スクエアトゥ)
次に、もう一つの方の木型も測定してみます。
先程の木型(タイプA)とは、つま先の長さと形状が(スクエアになり)異なりますが、同じサイズ「紳士用 27.0cm」になります。
踵からつま先までの全長を計測します。
全長は、309mm でした。
次に、幅も計測します。
一番張り出たボールジョイント部を計測します。
最大幅は、103mm でした。
最後に、甲回り(足囲/ボールガウス)を計測します。
足囲は、254mm でした。
この木型で作られた靴を列べて、木型との大きさを比較してみます。
靴を計測する(タイプB/スクエアトゥ)
靴の全長(アッパーの全長とソールの全長)を計測してみます。
アッパー全長は、313mm 、
ソール全長は、315mm でした。
次に、靴の幅(アッパーの幅とソールの最大幅)を計測します。
アッパー幅は、103mm 、
ソール最大幅は、115mm でした。
靴を履いてみる
実際に、靴を履いた様子。
甲のフィット具合もちょうど良く、踵(かかと)もフィットし余裕がないうえ、つま先は適度なゆとりがあり、指も当たらずジャストサイズと言えます。
幅(ボールジョイント)には適度な圧迫があり、幅、甲、踵の3点がフィットし、つま先には適度なゆとりがある「ジャストフィット」と言ってよいです。
まとめ
それぞれの寸法を以下にまとめてみます。
足(素足)の寸法
全長:
・人差し指(第二趾)まで 275mm
・親指(母趾)まで 270mm
足幅:110mm
足囲:275mm(ころし寸270mm)
革靴サイズ(JIS規格)
人差し指(第二趾)を基準にした場合:
27.5cm/ワイズ3E(EEE)
親指(母趾)を基準にした場合:
27.0cm/ワイズ4E(EEEE)
木型(タイプA/サイズ27.0cm)
全長:298mm
幅:103mm
足囲:255mm
木型(タイプB/サイズ27.0cm)
全長:309mm
幅:103mm
足囲:254mm
以上ですが、実際の足の寸法と木型の寸法が、かなり違っていることがおわかりいただけると思います。国内の革靴は、JIS規格(日本産業規格)に基づき、「足入れサイズ」と言われる足の全長をサイズ表記することで統一されているからです。
例)足の全長が27.0cmの場合=革靴サイズも「27.0cm」
また、つま先には歩行時に指が当たることのないよう、1.0~1.5cm程度の余裕(捨て寸)が必要です。
それに加え、ドレスシューズの場合、つま先のシェイプがドレッシーにシャープなものが多いため、デザイン上の余裕が生じます。そのため、足の全長より木型の全長の方が大きく上回ることが多くなります。
それとは逆に、ワイズ(幅や足囲)に関しては、木型の方が足の実寸よりかなり絞った(下回った)値になっていることがわかります。それでも履いたときは、そこまで窮屈な感じはなく、むしろぴったりしていてちょうど良い感じなのです。仮に、足の足囲(甲回り)通りに木型を作った場合、靴下のようなフィット感に欠く靴になってしまうと思われます。ですので、足囲や甲回りのしぼり具合(ころし具合)が、フィット感に大きく影響してくるため、昔から職人の木型づくりのノウハウなのだと思います。
足の寸法を測っても、なかなか靴のサイズはわからないものです。
先にも述べさせていただきましたが、国内の革靴に限っては、JIS規格(日本産業規格)に基づき、サイズ表記が統一されています。
ですので、ぜひご自身の足の寸法も測ってみてください。(→足の寸法を計測する)
幅(ワイズ)も、足の周囲をメジャー(巻き尺)で測って、JIS規格のサイズ表に当てはめれば、目安がわかると思います。
ただ、ナイキやアディダスといったナショナルブランドのスニーカーは、JIS規格のサイズやワイズを当てはめることができません。メーカーやサイズによって異なりますが、革靴サイズから概ね0.5cm~1.5cm程度の誤差(同じサイズでもスニーカーの方が小さい)が生じます。
(例:ナイキの27.0cm=革靴では25.5cmくらいに相当)
ご参考:
・スニーカーと革靴のサイズの違いについて
・JISサイズとスニーカーサイズの違い
もし当店の靴の中で、購入をご検討いただいきサイズ選びに迷われた場合は、お気軽にご相談ください。(ご参考:サイズ選びの質問集)
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